鮮やかな紅葉と滝を楽しめる、安達太良山の渓谷ハイキング🍁
エメラルドグリーンの滝壺が美しい「魚止滝」は必見!
こんにちは、岳温泉観光協会です!
今回ご紹介するのは「あだたら渓谷自然遊歩道」。前回のコラムでご紹介した薬師岳パノラマパーク同様、こちらも美しい紅葉を満喫できるこの時期おすすめのスポットです。昨年秋、安達太良山のガイドをしている五十嵐敏朗さんに見どころを案内していただきながら散策してきましたので、その時の様子をお届けします♪
あだたら渓谷自然遊歩道は、安達太良山に源流を持つ原瀬川の上流・烏川(からすがわ)沿いに整備されています。標高約950~1,000m、全長約1kmのコースには複数の滝があり、変化に富んだ渓谷と紅葉の共演を楽しめるのが魅力です。「普通に歩いて1時間、ゆっくり歩いても1時間30分あれば散策できます。急な階段や足場の悪いところもあるので注意が必要ですが、お子さんでも歩けますよ」と、五十嵐さんが教えてくれました。本格的な登山をしなくても、気軽に安達太良の大自然に触れられるのが嬉しいですね。
渓谷ハイキングのスタート地点は、岳温泉街から車で約15分の奥岳登山口。くろがね小屋・勢至平方面登山道を少し歩いた右手に遊歩道の入り口があります。
ここから坂道を下り、森の中を流れる烏川へと下りていきます。「風が強い日はあだたら山ロープウェイが運休になることもありますが、遊歩道は森が風を遮ってくれるので意外と快適に歩けるんですよ」と五十嵐さん。遊歩道から眺める山の斜面はミズナラ、クヌギ、イタヤカエデなどが黄色やオレンジ色に染まり、とても鮮やか。美しい紅葉に見とれてしまいますが、この日は雨上がりで地面がぬかるんでいたので滑らないように気をつけながら慎重に歩みを進めていきます。
下っていくにつれて次第に川の音が大きくなり、ほどなくして烏川にかかる「滝見橋」に到着。この橋から最初の見どころ「二階滝」を眺めることができます。色づいた木々の下を清らかな水が段々になって流れ落ちるさまが美しく、スマホで写真をパシャリ。「名前から二段と思われがちですが、本当は三段の滝。滝の落差が二階建て分くらいということで二階滝になったと聞いています」。名前にまつわる豆知識を聞いてなるほどとうなずきます。
二階滝を左手に見ながら階段を登り、渓谷の上流に向かって遊歩道を進んでいきます。
遊歩道周辺の木々は広葉樹がほとんどですが、常緑針葉樹のアスナロ(ヒバ)の自然林も見られ、かつて炭焼きに使われていた「炭窯跡」もあります。「この辺りにあるクヌギなどの木を使って炭焼きをしていたようです。遊歩道ではここだけですが、安達太良山の別の登山道にもいくつか炭窯跡があるんですよ」
続いて最大の見どころの一つ「魚止滝」が現れます。紅葉の木々の間から清冽な水が勢いよく流れ落ちる、とても美しい滝です。落差は15~20メートルほど。ここから上には魚が行けないからだと一見して名前の由来がわかりますが、五十嵐さんによると実際に魚がいるのはもっと下流なんだとか。
この日はあいにくの天気でしたが、晴れていて日当たりのタイミングがよいと、下の写真(緑の時期のものですが…)のようなエメラルドグリーンに輝く滝壺を見ることができるので必見ですよ。
魚止滝は本流のわきに、斜面から流れ出ている小さな滝が複数あるのが特徴ですが、これらは伏流水なんだそう。「伏流水の水源は烏川とは別なので、渇水で上から流れてくる水が少なくても魚止滝の滝壺の水量はあまり変わらず、川の水が干上がったりしないんです。数年前に渇水で本流が白糸の滝みたいに細くなったことがありましたが、その時も滝壺の水量は変わらなかったんですよ」。自然は不思議でおもしろいと解説を聞いてしみじみ思います。
「昇竜滝」「紅葉滝」などこの時期ならではの見どころが満載
魚止滝を後にして少々急な階段を登っていくと、滝の上部にかかる橋に至ります。この橋は、次なる見どころ「昇竜滝」のビューポイントです。川が蛇行しながら流れくだる様子が天に昇っていく竜を思わせ、そのネーミングに納得します。
「昇竜滝は、川面の近くまで紅葉の葉がかかる様子が絶景です。魚止滝でUターンする方も多いのですが、ぜひここまで来てほしいですね」と、五十嵐さんも太鼓判を押します。天気に恵まれると色づいた木々が陽射しを浴びて鮮やかさを増し、下の写真のような美しい景色を楽しめます。白く輝く滝と紅葉のコントラストはもちろん、岩の上に散り敷いた落ち葉の絨毯も絵になりますね。
昇竜滝を眺めながら橋を渡り階段を登っていくと、滝を挟んだ向かいの岩肌にタテの亀裂が入っていることに気がつきます。これはここの地質の特徴だと五十嵐さんが解説してくれます。「地面の下からマグマが上がってきて、地表で急激に冷えるとタテに亀裂が入るんです。この辺りの岩盤もそうで、かなり古いものだと考えられます」
この一帯の川床は小石や砂利などではなく、岩盤であることも大きな特徴。それがよくわかるのが、続いて現れる「平滑(ひらなめ)の床(とこ)」です。広い河原も岩盤でできていて、岩の上を澄んだ水が滑るように流れています。時間に余裕があれば、河原におりて清流に触れてみるのもいいですね。
ところどころに階段のある遊歩道を進むと、やがて「見返橋」に到着。その名のとおり、渓谷の上流と下流を見返って(振り返って)みるとおもしろいと五十嵐さん。「この橋から上流側を見ると『紅葉滝』が望め、下流側を見ると古い岩盤が削られて川が流れている様子がわかります。違った景色が見えるので、ぜひ両方見てみてください」
見返橋から少し歩いた遊歩道の右側にはダケカンバの古木があります。「若いダケカンバは幹が白いんですが、古木になると色が変わってくるんですよ」。言われてみるとたしかに幹が灰色っぽくくすんでいて、いかにも古木らしい風情が漂っていますね。
さらに進むと、最後の見どころ「紅葉滝」が現れます。「ここは滑り台なんです」と五十嵐さんが言うとおり、なめらかな岩盤の上を水が流れ落ちる様子はまさに滑り台そのものです。実際、あだたら渓谷自然遊歩道では夏の間(7月~9月)シャワーウォークを体験できますが、そのクライマックスが紅葉滝で行う天然のウォータースライダー。この時期はさすがに滑ることはできないので、木道から眺めて楽しみます。
紅葉シーズンならではの紅葉滝の見どころは、川面を彩る落ち葉だそう。「普通だと落ち葉は流れてしまいますが、ここは川床の岩に苔が生えているので、落ち葉が流れにくいんです。いろんな条件が揃うと、色鮮やかな落ち葉が川の底にびっしりついた様子が見られて本当にきれいなんですよ」
紅葉滝の名にふさわしいその景色をぜひとも見たい! 滝壺がエメラルドグリーンに輝く紅葉の魚止滝も見たい! 来年の紅葉シーズンにもまた来よう! と決意したところで遊歩道はくろがね小屋・勢至平方面登山道と合流し、ゴールの「烏川橋」に到着。手軽に歩けるコースなのに見どころいっぱいで楽しかった~✨
ここからは登山道を歩いて奥岳登山口へと戻り、ハイキング終了。お疲れさまでした!
あだたら渓谷自然遊歩道の紅葉の見頃は、例年10月下旬~11月上旬です。安達太良山頂や薬師岳パノラマパークが見頃を過ぎた後も、まだまだ美しい秋景色を楽しめますよ。鮮やかな紅葉に彩られた渓谷ハイキングへぜひお出かけくださいね。
※記事中の紅葉の見頃は例年のものです。天候などによって前後しますので、事前にご確認のうえお出かけください。紅葉の様子は岳温泉観光協会のSNSで随時お知らせいたします。
あだたら渓谷自然遊歩道
所在地:福島県二本松市奥岳温泉
問い合わせ先:岳温泉観光協会 電話0243-24-2310