【体験レポ】フリーライターが岳温泉ワーケーションに参加してみた
「岳温泉ワーケーション」参加者の体験レポートをご紹介します。
経緯についてはこちら。
東京を拠点に活動するライターの安心院 彩さんによる体験レポートです。
福島県・二本松市にある安達太良山のふもとの温泉郷、「岳温泉」。2024年2月末、岳温泉観光協会に全面協力していただき開催されたワーケーションプログラムに参加しました。
控えめに言って最高すぎた「温泉×ワーケーション」の4日間の模様を、写真を交えてお届けします。岳温泉や温泉ワーケーションが気になるという方は、ぜひ最後までお付き合いください!
4日間で「岳温泉」を堪能するワーケーション企画
私は普段、フリーランスのライターとして活動している。取材で聞かせていただいたお話を、Webなどの記事にまとめるのが主な仕事だ。出社すべきオフィスもなく、ほとんどの仕事はオンラインで完結する。少し格好つけて言うと「ノマドワーカー」だ。
今回のワーケーションプログラムも、私のようなノマドワーカーが集まり、空いた時間で仕事をしながら、岳温泉の自然や観光を楽しむ、という企画だ。といっても今回は3泊4日という限られた期間にさまざまな企画を詰め込んでもらっているので(ありがたい)、まあまあ忙しい。
開催概要とスケジュールはこちら。
<期間>
2024年2月26日〜29日(3泊4日)
<参加条件>
リモートワーク可能な方。note等で自分で発信可能で、レポートを発信できる方。
「岳温泉」に導く不思議な縁
人生とは、不思議な縁でまわっている。そう、30代になってつくづく痛感する。というのも、実はこのプログラムに参加したのも、「偶然」とは言いきれないからだ。
私は一昨年末、東京都の二次離島である青ヶ島で開催された「移住体験プログラム」に参加した。「え、青ヶ島?」と思った方。それを語り始めるとこのレポートが終わってしまうので、詳しくはこちらのレポート記事を読んでほしい。
同時期に「移住体験プログラム」に参加していたのが、福島・二本松市の岳温泉で地域おこし協力隊として活動する青年(?)だった。彼は地方創生の一環で青ヶ島を訪れており、移住体験中は青ヶ島と岳温泉の魅力や共通点の多さを雄弁に語っていた。
次第に、「岳温泉ってどんなところだろう……行ってみたい……」とふつふつ興味が湧いていた私。最終的に「次は岳温泉で会おうね!」と約束をして島から帰ったのだった。
彼の驚異の企画&実行力と(私を含む)参加メンバーのフットワークの軽さにより、約束からおよそ2ヶ月後に実現することになる。
「面白そうな誘いには飛び乗る」が信条で生きているので、即決で参加を決めた。
東京から約2時間!あだたらの大自然が広がる古きよき温泉郷
前述の通り、岳温泉は福島県・二本松市にある安達太良山のふもとに位置する温泉郷だ。高村光太郎の『智恵子抄』で「ほんとうの空」と詠われ、智恵子の故郷としても知られる。
東京からは、東北新幹線と東北本線を乗り継ぎ約2時間。二本松駅で下車し、路線バスなどに乗って20分ほどで岳温泉エリアに到着する。(無料送迎バスを出してくれる宿もあるそう)
個人的には「思ったより近い……!」という体感ではあったが、今回乗り継ぎがかなりうまくいった(完璧なスケジューリングをしてもらっていた)から、というのもありそうだ。(詳しいアクセスはこちらから)

(ここからヒマラヤ大通りが始まる。2月末の二本松は雪もちらつく)
人口は1,200名ほど。「ヒマラヤ大通り」というメインの大きな通りの周辺に、懐かしさを感じる古きよき佇まいの旅館やホテル、商店などが点在している。車で少し足を伸ばせば東北サファリパークやゴルフ場、キャンプ場もあるそうだ。ちなみにコンビニやATM、コインランドリーは徒歩圏内にあるので安心。

画像:岳温泉散策&ガイドマップ
郷土料理「ざくざく」づくり
1日目、二本松駅から大玉村にある「あだたらの里直売所」へ。夕食の買い出しを行う。

(直売所に並ぶのは、地元の新鮮な野菜ばかり)
観光協会で簡単なオリエンテーションを受けたあと、1日目にお世話になる『ホテル パラダイスヒルズ』にチェックイン。到着して早々温泉を堪能し、旅の疲れ(というほど疲れてない)をしっかり癒した。
その日の夕食づくりは、宿泊先から歩いて5〜10分のホテル『mt.inn(マウントイン)』に用意された自炊キッチンで行う。直売所で購入した新鮮な野菜を使い、福島の郷土料理「ざくざく」をつくっていく。

(人参やごぼう、こんにゃくなどをその名の通り「ざくざく」刻んでいく)
大した役目を果たさなかった気もするが、みんなでお酒を片手にワイワイ料理をする時間は学生時代に戻ったようでとても楽しかった。
完成したのがこちら。
野菜の出汁を活かしたやさしい味で、体に染みわたる。言わずもがな、お酒との相性は抜群。
池まで白く濁る?! 週に1度のミルキーデイ
岳温泉の大きな特徴の一つが、源泉(安達太良山)から温泉街までの引き湯の長さだそうだ。その距離なんと、約8キロメートル。その壮大な距離を、約40分かけて湯を引いているのが「湯守(ゆもり)」と呼ばれる人々だ。
冬場は厳しい積雪もある中、標高1,500m付近の山頂付近での作業は時に危険も伴い、非常に過酷だ。しかし、「湯守」は岳温泉を支える大切な文化の一つとして古くから続いているのだと言う。
岳温泉の「湯守文化」については、テレビ番組でも紹介されたそうだ。(気になる方はこちらまで)
ちなみに、岳温泉の泉質は全国でも珍しいと言われる酸性泉。引き湯をする間に自然に湯もみされるらしく、お湯はさらりとしていてなめらかだ。美肌・殺菌効果が高く、「楽天トラベル 美肌の湯ランキング」で全国3位に選ばれたこともあるらしい。ありがたい。
ワーケーション中には「ミルキーデイ」も体験できた。「ミルキーデイ」とは、週に1度、普段は透明な温泉が牛乳のような乳白色に変わる日のことを指す。
▼「ミルキーデイ」の詳しい仕組み
湯守たちが「湯花流し(ゆばなながし)」という、湯樋に付着した湯花を流し落とす作業を行うことで、普段は透明のお湯が温泉成分たっぷりの湯花(ゆばな)で真っ白になります(岳温泉観光協会ホームページより)
幸運にも、私たちが岳温泉を訪れた翌日が「ミルキーデイ」!
この日は、温泉はもちろん、道の端を流れる小川も真っ白。岳温泉のシンボルでもある緑ヶ池にも足を運ぶと、エメラルド色の池にミルクのような乳白色のお湯が流れ込み、幻想的なマーブル模様を描いていた。
この風景を一目見ただけでも、「岳温泉に来れてよかった」と心から思った。
「岳のサウナ」で究極の“ととのい体験”
“サウナー”と呼ぶには程遠いが、温泉施設にサウナがついていたら必ず利用するサウナ好き。そんな私がひそかに(?)楽しみにしていたのが「サウナ体験」。
ヒマラヤ大通りに位置する温泉宿『陽日の郷 あづま館』の最上階フロアが2023年に全面リニューアルし、「岳のサウナ」として生まれ変わったそうだ。

(お土産品やサウナグッズも揃う、あづま館のおしゃれショップ)
「岳のサウナ」は大きく4つのエリアに分かれている。
ガラス張りであだたらの風景が一望できる「空サウナ」、樽型のバレルサウナに入れる「山サウナ」、ソフトドリンクやビール&サワー(!)、アイスキャンディまで完備されたラウンジ、そしてインフィニティプール。

(サウナ後には欠かせない「オロポ」も作れる)

(ビールとサワーが飲めるサーバー。ここは天国ですか……!!)
サウナ着や水着を用意すれば性別問わず一緒に楽しめるそうだ。
たっぷり水分補給をして準備したら、「空サウナ」へ。
熱々のサウナストーンが山積みになった巨大な「ikiヒーター」は全国初導入という本格派だ。サウナルームに入って数分で尋常ではない汗が噴き出てくるが、絶景が望める開放感からだろうか、不思議と息苦しさはない。
気分で選べるロウリュオイルをストーンに垂らして好きな香りを楽しめるのも、何度も足を運びたいと思わせる仕掛けでとても良い。
もう一方の「山サウナ」は、2台のバレルサウナがあり、それぞれ4名ほど入室できる。木の香りに癒されつつ、こちらでもセルフロウリュが楽しめる。
インフィニティプールは2月ということもありキンキンに冷えていた。プールのそばには外気浴にぴったりなリクライニングチェアも用意されているので、お好みの場所で完璧な“ととのい”体験ができる。
サウナ好きであれば、ぜひ一度は体験してほしい。
こけしづくり&民話茶屋ワークショップ
ワーケーションは岳温泉だけでなく、周辺の観光協会の方々にも多大なる協力をいただいた。
岳温泉から車で20分ほどに位置する「土湯温泉」地域おこし協力隊の方が開いてくれたのは、「こけしづくりワークショップ」。実は、土湯は「三大こけし発祥の地」として有名なのだそうだ。
といっても、木彫りのこけしをつくるわけではなく、いわゆる“プラ板”でこけしのキーホルダーやマグネットをつくってみよう!という、みんなで楽しめるカジュアルなワークショップだった(ので不器用な私は少し安心した)。

(真剣!!)
幼いころ夢中になったプラ板。大人になってやるとこんなにもワクワクするものなのかと感激しつつ、オーブントースターでしゅるしゅるっと小さく縮んだ「MYこけし」の姿には愛着が湧いていた。
もくもくと作業を進めしつつ、土湯温泉の特色や見どころを説明していただいた。土湯温泉は街のいたるところからお湯が湧き出ており、単純泉や硫黄泉など宿によってさまざまな泉質が楽しめるのだそうだ。次はぜひ土湯まで足を伸ばしたい……!

(個性が出すぎる愛しきこけしたち)
3日目には、大玉村にある「森の民話茶屋」へ。大自然に囲まれた中に突如として登場するのが、絵本から飛び出たような一軒のログハウス。
「森の民話茶屋」は、福島の語り部による「民話」をライブで楽しみながら、ボリューム満点のお膳やコーヒー、抹茶がいただける、というスタイルのお茶屋さんだ。そこで地域おこし協力隊として活動する方とともに、「民話茶屋、民話文化の継承」について語り合うワークショップを行ったりもした。
▼そもそも「民話」とは…
「民衆(みんしゅう)の中から生まれ伝承されてきた説話、民譚(みんだん)」(広辞苑より)
大変恥ずかしながら、ここに来て初めて「民話とは何か」をきちんと知った気がする。
「口頭で語り継ぐ」という文化的な特性もあり、民話の伝承は限られた人にしか行えないそうだ。民話の語り部を継ぐ人がいないと、茶屋そのものの存続も危うくなってしまう。
そうした課題を共有してもらいながら、「どうすれば民話や民話茶屋の存在を広く認知してもらえるか」「古き良き伝統を守り継承できるか」を話し合った。
実際には私たちでは想像し得ないさまざまな問題も複雑に絡み合っているのだろう。それでも、今回限られた時間で白熱した議論が行われ、僭越ながら私たちにできる限りのアイデアは出しきれたのではないか、と思っている。
「地域の課題」とは往々にして行政や地域住民だけで閉じて議論されがちなものが多い。しかし、今回のように性別も年齢も職業もさまざまで、多様なバックグラウンドを持つ人たちで色々なアイデアを出し合うことで、可能性も広がるのではないだろうか。
ワークショップに参加した私たちにとっても、その地域の課題、未来が「自分ごと」になり、再訪の動機づけにもつながるので良いことづくめだ、と思っている。
応援しています、そしてまた来ます。

(大玉村のカレーは絶品)
温泉ワーケーションは最高だった
ここからは、紹介しきれなかった岳温泉の魅力を写真とともにダイジェストでお届けする。

(ヒマラヤ大通りをのぼりきったところには温泉神社がある)

(日本画のような絶景)

(『ホテル パラダイスヒルズ』のワークスペース)

(2日目に宿泊した『光雲閣』ではなんと客室露天つき……!!)

(露天風呂から朝日が見えた)

(同じく光雲閣の最高ワークスペース)

(マウントインのお部屋は北欧風?でとってもおしゃれ)

(マウントインのロビー。ポップで可愛らしい)

(あづま館エントランス付近には焚き火を眺めながら入れる足湯が。チルすぎる)

(酒好きなワーケーション参加メンバーと。美味しい地酒をいただきながら)

(チーズケーキ屋さん。ジブリの世界に出てきそう)

(岳温泉のユニークな文化?「ニコニコ共和国」国会議事堂。話せば長くなるので本記事では割愛)

(至るところに飾られているつるし雛)

(春になると満開の桜並木が楽しめる「桜坂」)
今回、岳温泉観光協会の全面協力ということもあり、3泊すべて別の宿に宿泊するというなんとも贅沢で特別な体験をさせていただいた。(大感謝!!)
昔ながらの良き風情を感じる温泉街の街並みを残しつつ、「温泉ワーケーション」に最適なおしゃれなワークスペースも次々と出来上がっており、新しさと旧さが良い具合に共存している印象だった。
温泉やサウナでととのった後は、リフレッシュした頭で仕事に打ち込む。ちょっと疲れたら周辺を散策したり、グルメを楽しんだりして、また温泉に入る。

(主催者から「もうちょっと仕事してほしかった」と言われた、ごめんなさい)
特にライターの私から見ると、「執筆」という集中力が問われる作業にはもってこいの働き方なのでは、と感じた。今回は弾丸でお邪魔したので、次はゆっくり「おこもりワーケーション」をしたい。

(地域の方々にお集まりいただいた最終日の飲み会)
4日間お世話になった土湯温泉、大玉村地域おこし協力隊の皆さん、そして岳温泉観光協会と岳温泉の皆さん、本当に本当にありがとうございました!
(文責=安心院 彩)